税金の専門家といえどもミスを犯すときはあります。結果的に本来よりも多くの税金を納めなければならなくなると、長い付き合いの税理士が相手でも、損害賠償を請求しようと考える納税者はいるでしょう。こうした事実を前提にしたのが「税理士職業賠償責任保険」(税賠保険)です。
税務上の過誤があったことで税理士が損害賠償を受け、保険金の受け取りを請求したケースを日本税理士会連合会(日税連)は紹介しています。毎年多いのが、消費税に関するうっかりミスです。
例えば、消費税の課税事業者であるかどうかを税理士がしっかり確認しなかったことで、税負担額が大幅に増えてしまったケースがあります。Aさんは法人設立から約2カ月経ったときに、税理士との最初の打ち合わせの席で、設立事業年度に多額の設備投資をすることを伝えたうえ、資本金の額を2億円とする試算表を渡しました。税理士はこのまま設立時の正確な資本金額を確認せず、消費税の課税事業者であると思い込んでしまいました。しかし実際は設立時の資本金額は10万円で免税事業者でした。しっかり認識していれば「課税事業者選択届出書」を提出することで消費税の還付が可能だったとして、Aさんは税理士を訴えました。
簡易課税制度を不適用としなかったことで過大納付になったケースもあります。B社は、売電事業の設備投資にかかる消費税の還付を受けようとしましたが、簡易課税方式が適用されたため還付が受けられませんでした。税理士の関与以来、課税売上高が5千万円を超えていて、その期間は簡易課税制度が適用されていなかったことが一因。簡易課税制度を一度選択すると「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出するまで、課税売上高が5千万円以下となれば簡易課税方式で納税することになります。B社は設備投資による損害期の適用方式が簡易課税になってしまう状況だったにもかかわらず、不適用届出書を提出していなかったために、本来よりも多くの税金を納めることとなりました。
汗水垂らして手に入れたお金をムダに納め過ぎないよう、間違いのない申告をしたいところです。
<情報提供:エヌピー通信社>